ニュース「VOICE」(毎日放送)に出演<ひこにゃん・著作権・商標>
11月15日のニュース「VOICE」(毎日放送)に出演しました。
彦根市とデザイナーとの間における「ひこにゃん騒動」について商標権や著作権について弁理士の立場からコメントさせて頂きました。
<騒動の概要>
「ひこにゃん」は、滋賀県彦根市にある彦根城の築城400年の記念イベント「国宝・彦根城築城400年祭」のイメージキャラクター。彦根市はイベント会社を通じてデザイナー「もへろん」氏からキャラクターを購入。ひこにゃんは、キャラクターを使用する際に通常必要な著作権使用料を、無料の許可制にすることで個人・企業を問わず広く参加でき、小規模企業を含めた様々な企業が参加し(その数1100社以上)、イベントを通じて街の活性化をはかる試みとして、経済界からも注目された。しかしながら、様々な業者が当所のキャラクターデザインから逸脱したデザインにて商品が販売されるようになり問題に。デザイナーから彦根市側に業者の管理などを求めて申し入れたものの彦根市は黙殺し、デザイナーは裁判所への調停に踏み切った。
●著作権譲渡契約について
彦根市側としては著作権の一切の権利を譲り受けたとしている。ただ、今回のキャラクターは単なる彦根市のキャラクターとしてではなく、400年祭に使用するキャラクターとして採用しているため、400年祭後のキャラクター使用について著作権が彦根市とデザイナーのいずれに属するかの問題がある。当事者の交渉経過が不明であるが、調停の中で話し合うことになると思われる。
●キャラクター改変について
彦根市が譲り受けたのはキャラクターの3パターンのみであるにもかかわらず、各業者はキャラクターを勝手に改変。少なくとも400年祭の間は著作権が彦根市に帰属すると仮定しても、著作人格権、特に同一性保持権(著作権法20条)はデザイナーに帰属するため、改変(改変の程度問題もあるが)を行っている各業者はデザイナーの同一性保持権の侵害の可能性が生じる。
●彦根市による商標登録について
彦根市はキャラクターと愛称について商標出願を行っている。特許庁では著作権との抵触を審査しないことから(というよりも問題が複雑になるため審査できない)、いずれも年内には登録されると思われる。しかしながら、仮に400年祭の後に著作権がデザイナーに帰属すると、彦根市の商標権はその出願よりも前に発生した著作権に抵触するため、商標の使用が制限されることになる(商標法29条)
●その他
キャラクターはイベント会社における職務著作との声もある。職務著作であるとすると、上述の著作権全体(同一性保持権も含む)がイベント会社に属するため、デザイナーとしては何ら権利がないことになる。しかしながら、デザイナーがイベント会社の従業員(またはそれに準ずる者)といえるかどうかは少々難があるため、職務著作の適用は厳しいように思われる。
今回の騒動では、やはり彦根市がデザイナーとの間で契約をしっかりしていなかったことや、各業者に対するキャラクター管理が放置されていたことが問題の始まりである。彦根市としてはここまで人気が出るとは思っていなかったためにそれらの認識が甘かったのであろう。彦根市にかかわらず多くの自治体や公的機関では著作権に対する認識が低いのが現状である。「みんなが楽しければそれでいいではないか」との声も聞かれるが、それでは中国の偽ディズニーランドの言い訳と同じになってしまう。日本にとって知的財産権がますます重要な時代であり、未だ認識の甘い自治体、公的機関、さらには企業は今回の騒動を教訓に知的財産管理のあり方について今一度考えるべきであろう。





