小林国際特許商標事務所ブログ

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ものづくりベンチャーの新興業界における機会について<特許事務所だより>

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今回はものづくりを中心としたベンチャー企業が新興業界に進出するにあたって、そこで考えられる機会について検討してみます。

経営学分野の研究を通じ、業界構造のタイプには数種類ある。
マイケルポーターによると市場分析業界、新興業界、成熟業界、衰退業界、国際業界ネットワーク型業界、超競争業界、コアなし業界である。
この中で、いわゆるものづくりに特化したベンチャー企業は新興業界に身を投ずる場合が多いように思われる。
この新興業界には、下記(1)〜(3)の機会があるとされる。
(1)技術リーダーシップ
(2)戦略的に価値ある資源の先制確保
(3)顧客のスイッチングコストの確立

しかし、ものづくりベンチャーにとっては、これら(1)〜(3)の機会は均等ではないと思われる。
以下に詳細に検討してみることにする。

1)技術リーダーシップ 
ある業界発展の初期の段階で、特定の技術に対して投資する企業は技術リーダーシップ戦略を実行していると言える。この戦略は、新興業界では2つの優位性があるとされている。第1の優位性は、ある製品の累積生産量が後発企業よりも大きくなるため、より低い生産コストで実現できるというものである。しかし、これはある程度の生産の能力を当初から有している企業に言えることであって、生産能力がさほど高くないベンチャー企業にとっては大きな優位性とならないであろう。

 第2の優位性は、特定技術に早期投資をして新製品を開発した場合、その技術に関する特許を受けることができるというものである。これはベンチャー企業にとって大きな優位性であろう。特に基本発明について特許化ができた場合にはその優位性が大きい。
 しかし、経済学者やコンサル屋からは特許の効果に疑問的な意見が多い。ある研究グループによると、すべての特許の60%は公開から4年でと特許が侵害されることなく模倣されるという。すべての特許をすべてリサーチしたのかどうかは少々眉唾ではあるが、これについてはあながち大きくはずれているものではないと思われる。言うならば、特許を回避するために研究・開発を行い、当該特許製品の代替品を出してくるのは常である。
 ただ、これはあくまでも今までの特許戦略の場合であると考えてよい。ベンチャー企業は往々にして特許を数件出すだけで止まってしまい、しかも特許の優先度も十分に検討しておらず、五月雨的な出願になっている場合が多い(特許戦略と呼べないものも多い)。
 しかしながら、事業戦略や研究開発戦略とリンクさせて特許戦略を構築すれば、きわめて強い特許群、つまり特許ポートフォリオを構築することができる。例えば他社からの侵害なき模倣を防ぐための代替品の特許化も検討に入れるなどである。このときに予算が限られているベンチャー企業がいかに効率的に特許戦略を構築するかどうかが重要である。
 これには経営者の特許戦略に対する意識改革と、それをサポートする軍師の存在にかかっているであろう。この軍師は、単なる特許マンや出願代書屋的な弁理士ではなく、技術・法律・経営の三要素を熟知した知財プロフェッショナルが要求されることを付言しておく。

(2)戦略的に価値ある資源の先制確保 
先駆者たる者は戦略的に価値がある資源を最初に確保することがきるという点で優位性があるというものである。例えば、原材料へのアクセス、好ましい地理的ロケーションなどである。例えば、初めてコンビニを行った企業は好立地を先に確保できるであろう。しかし、これはものづくりベンチャーにとっては大きな優位性とはなりにくいであろう。

(3)顧客のスイッチングコストの確立
 初めて世に製品を出すると、顧客を当該製品に固着させ、顧客が他企業から製品を購入することを困難にするというものである。例えば、マイクロソフトのワードやエクセルなどがこれに該当するのではないだろうか。かなり当初の段階で製品を発売して広めてしまえば、操作を覚えたものをわざわざ他の製品に変えにくくなる。マイクロソフトの最近の出す製品は一般ユーザ無視の姿勢が感じられなくもないが、これも顧客スイッチングコストが確立されるているからであろう。
 ものづくり企業にとって一つの優位性となるであろうが、ニッチ的な製品や大企業相手の製品の場合には、必ずしも顧客がスイッチングしにくいものではない。事実、大企業は当初はあるベンチャー企業と取引をしていても、他のベンチャー企業から同品質で安い価格の製品が出れば当該他のベンチャー企業にスイッチすることはめずらしいことでもない。
 しかし、このときに上述の特許戦略を構築していると、他社製品は特許侵害になりやすくなり、容易に製品を出しにくくなる。また、抵触の可能性があると大企業は危険を恐れて少々の価格の安さだけでは他のベンチャー企業にスイッチングしにくくなる。つまり、特許戦略によって顧客のスイッチングコストをさらに確立しやすくなるわけである。

 以上のように新興企業の(1)〜(3)の機会を検討してみるに、ものづくりベンチャーにとっては(1)技術リーダーシップ(特に特許戦略による優位性)が大きく、そのための効率的な特許戦略が重要であると言える。繰り返しになるが特許戦略に対する経営者の意識改革と、真の知財プロフェッショナルの存在が鍵になるであろう。

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