小林国際特許商標事務所ブログ

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外国での特許取得について

最近、企業のグローバル化に伴い、中小企業でもアジアを中心に事業展開するケースが増えています。
実際、弊所でも、10年程前は中小企業のお客様のほとんどが日本国内のみに特許出願していたのですが、ここ数年、外国に出願するケースが非常に多くなってきております。
そこで、外国での特許取得について、簡単に説明させて頂きます。

(A)特許権は各国ごとに取得する
 特許権の効力は特許権を取得した国の領域内に限られています。
 外国で第三者が製造、販売を行っている行為を特許権に基づいて差止などするときには、その国へ特許出願し、その国の特許庁で審査を受けて、その国で成立させた特許権に基づく必要があります。
 一つの国で特許権取得するだけで世界のどの国においても保護が受けられるようになる「国際特許」というようなものはありません。あくまでも国ごとに特許出願を行って、国ごとに特許庁の審査を受け、国ごとに○○国特許権を成立させることになります。

(B)世界各国で共通しているルール
 各国ごとに特許出願を行って各国ごとに審査を受けますが、これまで日本の制度で説明した次のような取り扱いは、基本的に、世界のどの国においても共通しています。
 先願主義:
 世界のどの国の特許庁でも、同一の発明については一日でも先に特許出願が行われているものが優先されます
 新規性:
 世界のどの国の特許庁でも、特許庁で特許出願を受け付ける前に世界のどこかで知られていた、あるいは用いられていた発明は新規性欠如と判断されて特許が認められません
 進歩性:
 世界のどの国の特許庁でも、特許庁で特許出願を受け付ける前に世界のどこかで知られていた、あるいは用いられていた発明に基づいて、特許出願の時点で、簡単・容易に発明できたものは進歩性欠如と判断されて特許が認められません

(C)外国へ特許出願するルート
 外国への特許出願には次の3ルートの中のいずれかを採用でき
ます。
 (ア)最初から、直接、目的とする国へ特許出願する
 (イ)日本で特許出願を行った後、1年以内に、その日本国特許出願に基づく優先権を主張して、目的とする国へ、直接、特許出願する(パリルート)
 (ウ)日本国特許庁へ国際出願を提出した後、所定の期間内に、目的とする国へ移行する(PCTルート)

(D)優先権制度
 各国における特許出願は、その国の公用語で、その国の特許庁が定める形式・様式に従って、その国の代理人(弁理士など)を通じて行います。このため、(ア)の、最初から、直接、目的とする国に特許出願を行うルートは、外国人(法人)にとって容易ではありません。
 そこで世界各国はパリ条約を締結し、第一国で最初の特許出願を行った後1年以内に、最初の特許出願に基づく優先権を主張して、目的とする第二国への特許出願が行われた場合には、先願主義、新規性、進歩性、等の特許要件の判断を第二国の特許庁で行う際に、第一国で特許出願が行われていた日に第二国でも特許出願が行われていたとみなすようにしています。上述した(イ)を「パリルート」と呼ぶのはこのためです。

(E)国際出願(PCTルート)
 (イ)のパリルートの場合、日本国への特許出願の日から1年以内に翻訳文などを準備して外国へ特許出願する必要があります。
 しかし、日本国への出願日から1年では、将来どの国で特許の保護を受ける必要があるのか判断できないことがあります。
 (ウ)の特許協力条約(Patent Cooperation Treaty(PCT))に基づく国際出願はこのような場合などに活用できます。
 日本語※で、日本国特許庁に国際出願を行うことができます。※英語で日本国特許庁あるいは特許協力条約の国際事務局へ国際出願することもできます。
 国際出願を行った日に、PCT加盟国(世界152カ国※)で特許出願を行ったことになります。上述したパリ条約の優先権を伴った国際出願を行うこともでき、この場合には、世界各国で審査を受ける際に上述した優先権制度の効果を享受できます。
 ※台湾(中華民国)は特許協力条約に加盟していないためPCTルートを使えません。台湾へ特許出願する場合には、直接、特許出願する、あるいは日本特許出願の日から1年以内に二国間の取り決めに基づく優先権を主張して特許出願します。
 国際出願を日本語で日本国特許庁に行って、台湾を除く、世界中の国での特許出願日を確保することができても、各国における特許権成立のために、各国特許庁の審査を受けねばならない点は変わりません。
 そこで、国際出願を行った日、あるいは優先権を主張した国際出願の場合には優先権主張出願の日から30カ月以内※に、特許取得を目指す必要のある国の特許庁に対して、必要な翻訳文を作成して提出し、必要な出願料などを納付する、等の国内移行手続を当該国の代理人(弁理士など)を通じて行います。※優先日から31カ月以内であればよい国や、優先日から20カ月以内に所定の手続を行う必要のある国もあります。
 国内移行手続を上述した所定の期間に行わなかった国における特許出願は消滅します。

(F)PCTルートの利点
 時間的余裕を確保できる
 パリ条約の優先権主張出願の場合、優先権主張の基礎とした日本国特許出願の日から12カ月(1年)以内に翻訳文を作成して目的とする国へ特許出願します。国際出願の場合には、優先権主張の基礎とした日本国特許出願の日から12カ月(1年)以内に日本語で日本国特許庁に国際出願しておけば、翻訳文を作成して目的とする国へ移行するのは優先権主張の基礎とした日本国特許出願の日から30カ月(2年半)以内になります。パリ条約の優先権主張出願の場合に比較して翻訳文作成、等の高額の費用が発生する時期を18カ月遅らせ、その間に、その国に入っていく必要があるのかどうか、その国における事業の進展などを勘案しながら余裕を持って判断できます。
 国際調査報告・見解を利用できる
 国際出願を行いますと、国際出願で特許請求している発明が世界の各国特許庁で審査されるときに新規性、進歩性の判断で引用される可能性がある先行技術文献(日本国特許庁が発行している特許出願公開公報だけに限らず、米国、欧州、中国などの各国特許庁が発
行している公報もピックアップされます)を探す調査が日本国特許庁審査官によって行われ、その結果(国際調査報告)と、その結果に基づく新規性、進歩性に関する日本国特許庁審査官の見解(国際調査機関の見解)を受け取ることができます。
 国際調査報告、国際調査機関の見解は将来の各国特許庁の審査を拘束するものではありません。しかし、これらを受け取ることで、将来、目的とする国へ移行して審査を受けたときに特許成立する可能性についてある程度の判断を行うことができます。

(G)外国特許出願費用
 ある程度多くの国に特許出願を行う必要があるときには世界中の多くの国での特許出願日を確保できるPCTルートの方がパリルートより費用面で有利で、外国出願する国が1~2カ国でしかなく、今後2年程度の間に「特許出願を行う必要がある」という判断
に変更が加えられる可能性もないというときにはパリルートの方がPCTルートより費用面で有利であると考えられています。
 いずれにしても、翻訳文作成、外国において当該国の特許庁に対する手続を行う外国代理人の費用(手続手数料と外国特許庁へ納付する出願料)が必要になるため外国への特許出願には非常に高額な費用が必要です。
 このような外国出願費用について、ジェトロや、愛知県などの地方自治体で助成が行われています。それぞれで申請時期や手続などに相違がありますので確認しておく必要があります。

以上、簡単に説明致しましたが(それでも長いですが)、ご相談などがございましたら遠慮なく弊所にお問い合わせ下さい。
(文責:弁理士 小林正樹)

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